南ア深南部 黒枯山(1621m)、風イラズ(1990.3m)、三ッ合山(1980m) 2011年12月23日

所要時間
 6:38 駐車余地−−6:54 743m標高点−−7:30 堰堤入口−−7:32 崩壊地−−7:36 斜面に取り付く−−8:11 稜線(1178m標高点)−−8:28 1280m三角点峰−−8:35 栗尾峠−−9:46 抜ヶ谷山−−10:03 黒枯山(休憩) 10:25−−11:34 風イラズ(休憩) 11:52−−12:37 三ッ合−−13:23 風イラズ(休憩) 13:43−−14:33 黒枯山−−14:47 抜ヶ谷山−−15:36 ルートミスに気づいて戻る−−15:47 栗尾峠−−15:56 1280m三角点峰−−16:14 1080m鞍部−−16:27 栗代林道−−16:52 743m標高点−−17:11 駐車余地

概要
 栗代林道より往復。現在は704m標高点の少し先で林道が崩壊し、車幅ギリギリは残っているが下部は空洞で危険すぎて車での通行は不能となっており、その先の廃林道化が進んでいる(バイクならOK)。743m標高点の先の崩壊個所は整備された階段で高巻きできたが、1178m標高点から西に落ちる尾根が林道と交差する北側で迂回不能な大規模崩壊があり、適当に斜面を登って稜線へ出て1280m三角点峰を越えて栗尾峠へ。稜線上は踏跡、目印があり籔はほぼ無し。1612m峰には「抜ヶ谷山」の標識ありだが1621m峰(黒枯山)には標識無し。黒枯山は西の展望良好。標高1800〜1850mの急登は無雪期なら特に危険は無くロープ不要。風イラズ山頂はなだらかで広く休憩にちょうどいいが樹林で展望なし。風イラズ〜三ッ合間は南アらしい深いシラビソ樹林でいい感じで歩ける。片道約10kmもあり、日の短いこの時期では明るいうちに戻れなかった

 南ア深南部の1900m台の山のうち、大無間山南尾根に三ッ合、風イラズの2山がある。アプローチを考えると南から攻めるのが最短であるが、ネットで調べると栗代林道は途中でゲートがあり、風イラズまでの往復でも日帰りは日の長い時期でギリギリのようだ。今は冬至間近で年間で最も日中の時間が短く、しかも三ッ合まで足を延ばすとなると苦しい状況だろう。カシミールで距離と累積標高差を確認すると片道約10km、2000m弱で、先週の小根沢山と同等だった。これなら明るいうちに帰れるかもしれない。林道は崩壊個所があって暗くなってから歩くには少しイヤらしいが、道が無い尾根で暗くなるよりはマシであろうし、思い切って日帰りで狙うことにした。

路面崩壊地。一応、軽自動車が通れる幅はあるが・・・ 手前の駐車余地に置く

 今回の登山口は寸又峡近くだが、先週の畑薙並みに東京から遠い。富士川沿いを南下して国道1号バイパスに入り、藁科川沿いの国道に乗り移って山の中を延々と西に進む。峠を越えてから道幅が広がって走りやすくなり大井川沿いに到着。寸又峡の案内に従って上流方面に向かい、左に曲がってグングン高度を上げて稜線を乗り越えるところで直進する細い道に入る。まだ舗装だったが栗代林道入口からダートに変わり、あとは入れるところまで入る。しかし予定していた743m標高点に至る手前で路床が1/3程度崩落した個所があり、その手前にトラロープが張ってあった。軽自動車なら通過できる幅だが、残った路面の下が空洞なんてことも考えられる。バイクなら安全に通過可能だろうが、もし車で入って落ちたらあの世行きだろうからと車はここで諦めて、駐車余地がある場所までバックし仮眠した。

 翌朝、冷え込むかと思ったら思いの外暖かく、窓ガラスの水滴は凍っていなかった。全国的に寒気に覆われて冷え込むはずだったが、寒気の端はここまで延びていないようだ。暖かいのは助かる。飯を食って出発。GPSは樹林で邪魔されて衛星捕捉できず現在位置が分からないままであった。

 崩壊地から先は最近車が入った形跡は無く、徐々に廃林道化が進んでいるように見られた。落石はあちこちに転がっているし、場所によっては斜面が崩れて林道を半分埋めている個所や、林道上に水が流れている個所もあった。地元林業用の軽トラでさえ入っていないのだから止めておいて正解だった。

水が流れる沢。本コース唯一の水場 登山者向け?
林道ゲートと崩壊地迂回用階段 う回路は立派

 水が流れる沢を回り込んで突き出した尾根(743m標高点)を回ると旧ゲート出現。というか、このすぐ先で大規模崩壊があり、ゲートが無くてもここまでしか車は入れないのであった。このゲートは間違って車が進入して崩壊地で転落しないための対策であろう。でもここはもう廃林道だけど。しっかりした梯子の迂回路があり、崩壊地最上部まで標高差20mくらい登らされ、反対側で階段で林道に復帰する。ここで林道に下らずに尾根を上がってもいいのだが、その場合は無駄に1293.7m峰を越えることになるのでやめた方がいい。もし稜線に上がるなら栗尾峠付近、もしその手前で崩壊地があった場合は次善の策として1080m鞍部がいいだろう。

林道に復帰。ここから先は完全に廃林道 廃ワゴン車
対岸には朝日岳 廃バス

 ここから先は廃林道であるが、思ったよりも路面は荒れていない。このまま栗尾峠取り付きまで行ければいいのだが、ネットで見た記録では林道が崩壊して残った狭い幅の路面を通過する箇所もあった。そんな場所はどこで出現するだろうか。歩いていると廃ワンボックス車、廃バスが林道脇にあり、ガラスは割れていたが急場の雨をしのぐためには価値がありそうだ。

土砂押し出し。安全に越えられる 栗代堰堤入口。でも堰堤は地形図に無い
朝日岳 林道崩壊地。大規模&垂直で横断は不能

 なおも進むと斜面崩壊地が出現するが、これは傾斜が緩く危険もなく乗り越える。そのすぐ先で栗代川に下る道の入口が出現、「栗代堰堤」と書かれている。地図にないダムか取水施設があるようだ。そしてそこから100m程度先に進んで右カーブしたところで大規模崩壊地にブチ当たった。林道はすっぱりと落ちてしまって斜面の迂回は不可能。反対側は100m以上向こう側で、斜面の傾斜がきつく高巻きするにもかなり登る必要がある。これを知らずに大無間山から栗代林道に下ってきた人がいたらどうするだろうか? いや、その場合は帰りの足は車ではなく列車のはずだから林道ではなく反対側の尾盛駅側に下るはずか。この場所は展望がよく大無間方面も見渡せるが、標高が高い場所は雲の中に入っていた。風イラズと思われる顕著なピークはまだ雲の下だが、これから天候はどうなるのであろうか。

土砂押し出し脇から斜面に取り付く 鹿避け柵を乗り越える
植林の作業道に乗る 杉植林を登る
休憩所あり 鹿避けネットのドアを通過

 通常の登山者ならここで諦めて戻るのだろうが、どうせ栗尾峠で尾根に出るのだからこの付近で適当に斜面に取り付いて上を目指せば問題ないと判断、このエリアでこの標高なら藪の心配はまずしなくていい。しばらくは林道法面で斜面に取り付けず、崩壊地付近で登れそうな場所を見つけて少し強引に登る。藪のない落葉樹林を僅かに登ると鹿よけ柵が登場し、これを超えないと標高が上がらないので近くに立木がある場所を探し、その木に登って柵を越えた。こちら側は植林帯であり藪はなく、上を目指して適当に登っていると作業道が登場。どこに行くのか分からないが上に向かう間は利用させてもらう。最初は柵に沿って上がり、そのうちに柵にぶち当たったが今度はドア付きで簡単に抜けられた。あとは巻き道を避けてジグザグに高度を上げる道を選び、小尾根に沿ってぐんぐん登っていく。途中、休憩場所のような切り倒した木で作ったベンチまであった。

傾斜がきつくなると唐松植林帯に変化 この辺はかなりの急斜面
1178m標高点付近で稜線に出る 残置されたワイヤーロープ

 なおも高度を上げると斜度がきつくなると同時に植林帯が終わって自然林へ。木に掴まりながら豪快(強引)に登っていく。登れないような傾斜区間は避けながらであるが。傾斜が緩むと稜線に到着、地形図で確認するとちょうど1178m標高点の辺りだ。登山者のものか不明だが踏跡はあるし目印はあるしで人の気配は比較的濃い。これ以降は尾根を辿ればいいので崩壊地の心配はしなくていい。

1280.1m三角点峰 尾栗峠
栗代林道側に下る道。たぶんもう使われないだろう 盛尾駅方面に下る道

 1280.1m三角点峰も樹林帯。そこから緩く下った鞍部が栗尾峠で、もしかしたらここから立派な道があるのかと思いきや、その先も踏跡程度の筋であり、栗代林道に下る踏跡などは落ち葉に埋もれて目印はあるがルートは分からなかった。正式登山道ではないので思ったよりは利用者は少ないようだ。文字が消えかけた古い標識が1枚だけかかっていた。尾盛駅に降りる側の道は北に向かって斜めに下っていた。

急な尾根を登る 尾根が緩む
真っ赤に錆びた標識 軽い笹が出現
1420m付近で西側にガレ登場 ガレから上部を見上げる
ガレから見た朝日岳
明るい尾根が続く ここも枯れた薄い笹

 鞍部からいきなりの急登をこなすと、しばらくは緩い登りが続く。踏跡明瞭、目印はたくさんで自分で目印を追加する必要がない。せっかく準備したのに。マイナールートとはいえ、ネット検索で何件も引っかかるのだからそこそこメジャーなのだろう。1350〜1400m付近では笹が登場するが広範囲で枯れており、数年前に開花したものと思われる。生きている笹もあるが、その中に明瞭な踏跡が通っているので藪漕ぎには至らない。その先の1420m付近で西側にガレが登場し展望が開ける。

ワイヤーがかかったままの枯れ木 自然林の尾根を登る
1612m峰に「抜ヶ谷山」の標識 抜ヶ谷山の先は矮小な樹木の尾根
これが本物の黒枯山 朝日岳の稜線の向こう側が見えてきた
黒枯山の登りは笹の中の踏跡を登る やっと風イラズの姿が
黒枯山山頂。樹林が開けた西側で休憩 黒枯山から見た深南部西部の山

 1600m付近は3つのピークがあり、2つ目のピークが黒枯山だと誤認しそうになった。このピーク周辺は低い照葉樹の藪で、尾根直上を歩いたので藪を突っ切ったら「抜ヶ谷山」の看板があって黒枯山の別称か?と思ったが、念のためGPSの電源を入れたら山頂はまだ北と出た。少しがっかり。鞍部に下って枯れた笹の尾根を登り返すと西側斜面の樹林が切れて草付きが広がったピークに到着。山頂標識がないか探したが見あたらないが、GPSの表示は黒枯山であった。西側の展望が良く休憩に最適な山であったが、今は冷たい北西の風が吹き付けて寒いので、東に移動して樹林の中で休憩した。少し雲が降りてきたようで風イラズの山頂は雲に隠れていた。エビのしっぽができるかな?

黒枯山山頂付近は枯れた笹藪 1560m鞍部
露岩が出てくるが問題なし シラビソの尾根を登る
1710m鞍部 標高1800〜1850mの急傾斜区間。危険個所は無かった

 次は風イラズだ。ここのポイントは1800〜1850m付近のコンタが詰まった区間で、安全に通過できるかだ。今日の様子では雪や凍結の心配はなく、岩がどの程度あるかが問題だ。ただ、ネットの記事を見る限りでは大したことはなさそうだが。1560m鞍部に下って藪皆無の尾根を登り返して1720m峰を越え、さらに進むと尾根が立ち上がって露岩混じりとなるが、岩登りとなるような地形はな、踏跡は登りやすい所を選んで付けられており、念のために持参したお助けロープの出番はなかった。この標高ではシラビソが優勢で籔も存在しない。

1870m肩。これより上部はシラビソ純林 南アらしい尾根
籔無しの尾根が続く 木に食われた標識

 これまでもシラビソは多かったが、標高1870m肩を超えるとほぼ純粋なシラビソ樹林に変わって南アらしくなる。この標高に登るのは今年最後だろう。このエリアのシラビソ帯は深南部西部とは違って笹は皆無で気持ちよく歩ける。既に雲の層に入ったが思ったよりもガスは薄く、樹林で先が見通せない方の影響が強かった。ガスが薄いせいか、木々にエビのしっぽは付いていなかった。

風イラズ山頂 ほぼ文字が消えた山頂標識

 最後の一登りで傾斜が緩むと意外に広い風イラズ山頂にに到着。文字がほとんど消えた古びた標識といくつかの目印があるだけで意外と人工物は少ない。もう少し新しい標識があると思っていたが。周囲は樹林で風は遮られるしテントを張るのにちょうどいい平坦地もある。水がないのが玉に瑕だが。残雪がある時期がいいかもしれない。

風イラズ北側直下のみシラビソ幼木あり 今回初めての雪
深いシラビソの尾根が続く 大無間は雲の中
もうすぐ三ッ合 三ッ合山頂

 さあ、最後のピーク、三ツ合へ。ここでアタックザックに換えて軽量化。大無間方面にも目印は続いている。山頂直下のみ倒木の下から生えたシラビソ幼木が邪魔だったが、すぐに発達したシラビソ樹林に戻り歩きやすくなった。尾根も明瞭で迷う心配はなく、緩やかに下って緩く登り返す。数週間前の阿寺山地や恵那山南部の笹藪から考えれば天国だ。やっぱあのエリアは笹が雪に埋もれた時期に行くべきか。小ピークを越えて最後の登り。尾根が左に屈曲するピークが三ツ合山頂であったが標識は皆無。山名事典記載の山なのでマイナーなのだろう。それに小さなピークなのでただの通過点なのだろう。樹林で展望は無しなのは仕方ない。

風イラズへと下る 大無間の雲が取れてきた
僅かに頭を出す大根沢山 風イラズ再び
ここを下る 標高1800〜1850mの急傾斜
黒枯山再び 黒枯山から見た遠州灘
抜ヶ谷山 振り返ると雲はすっかりとれていた
樹林の隙間から見た1280.1m三角点峰 この時点で間違った尾根に入っていた
ここから正しい尾根に向けてトラバース 栗尾峠

 風イラズに戻ってメインザックを背負って下山開始。急な尾根も下山時はあまり気にならずに通過、黒枯山で少々休憩。徐々に天候は回復していたようで風イラズの雲はとれて大無間も顔を出しそうな気配だ。抜ヶ谷山山頂部の照葉樹藪は西を迂回してパス、その先のピークの下りの笹藪帯は踏跡に従う。下りは帰りの時刻を気にしながらも気楽に歩いていたら、栗尾峠手前の1320m峰で明瞭な尾根を直進してしまった。この尾根にも目印があるが、今までよりもその数は少ないし踏跡も薄い。まあ、杉の植林帯で杉の落ち葉が多く踏跡は元々濃くならないが。標高1180mくらいまで下がって高度計の表示と私の頭の中にある地形とが合わないことを不審に思って地形図を開き、初めてルートミスに気づいた。このまま肩まで登り返すのは疲れるので標高1250mまで登り返し、南斜面を西にトラバース。植林帯で適度な傾斜であり藪もなく問題なし。小尾根を一つ超えた次の尾根が正しい尾根で、いくつもの目印が現れて安心した。ここでのタイムロスは15分程度だろうか。この時刻でこれは痛い。帰りは真っ暗かも。まあ、林道に出るまでが明るければ問題ない。

1280.1m三角点峰に落ちていた標識 さらに南下
1080m鞍部 西側の斜面を下る
作業道が消え尾根を適当に下る 再び作業道に出た
休憩地もあり 無事林道に出た
下ってきた作業道の入口 この標識の先に作業道入口がある

 栗尾峠から登って1280.1m峰を越えて1080m鞍部を目指す。ここも踏跡があるし尾根が顕著なので迷うおそれは少ない。鞍部に到着し、ここから西に下って林道を目指すことに。まっすぐ谷を下ると林道法面マークに出てしまいそうで、少し右(北)にルートを振るのが良さそうだ。鞍部付近も植林帯だが作業道は無かったが、適当に下るとすぐに作業道が出現。どこに下ろされるのかは不明だが、少なくとも林道のどこかに出るのは確実なので辿ってみたが途中でフェードアウト。尾根をまっすぐ下っていくと再び作業道が出現し、それに従う。今度は途中で消えることなく尾根に沿ってジグザグに下り、最後は右手に降りて無事に林道に着地。ちゃんと法面を避けた場所に出た。ちょうど私が林道に出ようと考えていた場所だった。上記写真の標識があるカーブ(小尾根突端)の先に入口があるので、栗代林道から登る場合はメインルートになるだろう。

 だいぶ日が傾いてきたが、もう林道の危険箇所はないので暗くなっても安心だ。旧ゲートの崩壊地迂回路を超えて薄暗くなってきたのでライト点灯。車に到着したときは真っ暗闇になる直前の残照ギリギリの時間帯だった。


 やはりこのロングコースを日帰りするには、一般登山者では日の長い時期でないと無理だろう。もしくは山中1泊。その場合は大無間まで足を伸ばすのがいいかもしれない。

 

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